70歳を過ぎた親や、自分自身の外出の足について、「バスや地下鉄が安く乗れる制度があるらしいけれど、いくらかかるのか分からない」と感じたことはありませんか。東京都には「シルバーパス」という高齢者向けの乗車制度があり、神奈川県内の横浜市・川崎市にも似た仕組みの敬老パスがあります。ただし、名称も費用も自治体ごとにまったく異なるため、「隣の県に住む親の分も同じ制度だろう」と思い込むと、手続きでつまずくことがあります。この記事では、東京都福祉局・横浜市・川崎市の公式情報にもとづいて、東京都シルバーパスを中心に、対象年齢・費用・申込方法を整理します。

  • 東京都シルバーパスは満70歳以上の都民が対象で、発行料金は住民税の課税状況によって1,000円または12,000円に分かれる
  • 2026年度は制度見直しまでの経過措置として、4〜9月に新規購入する課税対象者の負担額が10,255円から6,000円に引き下げられている
  • 横浜市・川崎市にも同様の高齢者向け乗車制度があるが、対象年齢・負担金・利用できる交通機関の仕組みは東京都と別物

なお、東京都シルバーパスには「本則の年間パス」と「経過措置による引き下げ」という2つの数字が混在しており、この違いを知らずに窓口へ行くと戸惑うことがあります。この点については記事の中盤で詳しく説明します。まずは、東京都シルバーパスの基本的な仕組みから見ていきましょう。

東京都シルバーパスとは? 誰が対象になる制度?

東京都シルバーパスは誰が対象? 満70歳以上の東京都民(寝たきりの方を除く)が対象で、都営バス・都営地下鉄をはじめ、都内の民営バス各社などで利用できる乗車証です。

東京都福祉局の案内によると、シルバーパスは満70歳になる月の初日から購入できる仕組みになっています。対象は「都民」であることが条件のため、都外に住む親の分を都内在住の子どもが代わりに申請する、ということはできません。パスの利用範囲は都営交通に限らず、都内を走る民営バス事業者の多くも対象になっており、日常の移動手段として広く使える点が特徴です。

申し込みは、シルバーパス発行窓口(都内バス営業所等)で、備え付けの「東京都シルバーパス申込書」に必要事項を記入し、対象区分に応じた本人確認書類と所得証明書類を提示して購入する流れです。窓口での対面手続きが基本となるため、本人が体調的に窓口へ行けない場合の代理申請の可否や必要書類は、事前に発行窓口へ確認しておくと安心です。

たとえば、都内在住の70歳になったばかりの方が、初めてシルバーパスを申し込む場面を考えてみます。まず、誕生月の初日以降に、最寄りのシルバーパス発行窓口(バス営業所など)へ向かいます。窓口で申込書に氏名・住所などを記入し、運転免許証などの本人確認書類と、住民税の課税状況が分かる証明書類(非課税証明書など)を提示します。書類に不備がなければ、その場でパスの交付を受けられます。都内は坂道や駅までの距離が負担になりやすい地域も多く、シルバーパスを持っていれば近所のスーパーや通院先までバス1本で気軽に出かけられるようになる、という声もよく聞かれます。

東京都シルバーパスの対象者確認から発行窓口での申込・交付までの流れを示した図解

シルバーパスの費用はいくら? 住民税でどう変わる?

シルバーパスの費用はいくら? 住民税の課税状況によって、年間1,000円または12,000円の2区分に分かれます。ただし2026年度は経過措置により、課税者の実質負担が変わっています。

東京都福祉局の案内では、発行料金は次の3つの区分で決まります。

  • 住民税非課税の方:1,000円
  • 住民税課税だが、前年の合計所得金額が135万円以下、または平成17年度に非課税だった等の経過措置対象者:1,000円
  • 上記に該当しない住民税課税者:12,000円(本則)

つまり「非課税か、課税でも所得が一定以下か」であれば1,000円、それ以外の課税者は12,000円が本則の年間料金です。都内でも年金収入が中心の高齢者は非課税・低所得に該当することが多く、実際に1,000円区分で交付を受けている方が少なくありません。一方で、給与収入や事業収入がある課税者は本則12,000円の負担になります。

2026年度の「6,000円」という数字は何が違う?

2026年度の負担額が6,000円というのはどういうこと? 制度見直しまでの経過措置として、2026年4〜9月に新規購入する課税対象者の負担額を、本則の半期分10,255円から6,000円に引き下げる措置がとられています。

ここが最も混同しやすいポイントです。東京都の広報では、「2026年度住民税が課税の方」を対象に、4月〜9月に新規購入する場合の負担額を、これまでの10,255円から6,000円に引き下げると案内されています。この6,000円は、年間12,000円の本則パスとは別に設定された「制度見直しまでの経過措置」としての半期区分の金額です。有効期限は、購入日にかかわらず2026年9月30日までとなります。

つまり、シルバーパスの費用を調べる際は「本則の年間12,000円(または1,000円)」の話をしているのか、「2026年度限定の経過措置としての半期6,000円」の話をしているのかを区別する必要があります。窓口で「6,000円と聞いていたのに案内が違う」と感じた場合は、購入時期(4〜9月か、10月以降か)と、対象となる住民税区分(8年度課税か非課税か)の両方を発行窓口で確認すると誤解を防げます。非課税・経過措置対象者の1,000円区分については、この経過措置による変更はありません。

制度が変わる過渡期は、「去年聞いた金額のまま」で判断してしまう典型的な失敗が起きやすい場面でもあります。次にシルバーパスを更新・新規購入する際は、金額だけでなく「いつ購入するか」によって案内される負担額が変わり得ることを踏まえ、窓口や公式サイトで最新の案内を確認してから向かうことをおすすめします。

東京都シルバーパスの本則料金(1,000円/12,000円)と2026年度4〜9月の経過措置(6,000円)の関係を整理した図解

シルバーパスはどこまで乗れる? 使える路線・使えない路線

シルバーパスはどこまで乗れる? 都営バス・都営地下鉄・都電・日暮里舎人ライナーの都営交通に加え、都内の民営バス各社も利用できますが、高速バスや空港連絡バスなど一部のサービスは対象外です。

シルバーパス公式案内によると、都営交通は都バス・都営地下鉄・都電・日暮里舎人ライナーが利用でき、これに加えて都内を運行する民営バス各社も対象になっています。都営交通だけでなく、生活圏の民営バス路線でも使える範囲の広さが特徴です。

一方で、高速バスや空港連絡バスなど一部のバスサービスは対象外とされています。「シルバーパスがあれば都内のバス・都営交通ならどこでも乗れる」という理解は基本的に正しいものの、遠出や空港への移動でバスを使う予定がある場合は、その路線が対象内かどうかを事前に確認しておくと安心です。JRや私鉄など、都営交通・対象バス以外の鉄道路線については、シルバーパスの公式案内や各事業者に個別に確認することをおすすめします。

このように、シルバーパスは「都内の生活圏を都営交通・民営バスでカバーする」ための制度です。通院・買い物など、日常の近距離移動を主な用途として考えると、制度の実態に合った使い方がしやすくなります。

神奈川県(横浜市・川崎市)にも同じ制度はある?

神奈川県にも同じ制度はある? 横浜市には「敬老パス」、川崎市には「高齢者外出支援乗車事業(高齢者フリーパス・高齢者特別乗車証)」があり、名称・対象年齢・負担金の仕組みが東京都シルバーパスとは別物です。

横浜市の敬老パス(敬老特別乗車証)は、市内在住で70歳以上の希望者が対象という点は東京都と共通していますが、負担金の仕組みが大きく異なります。横浜市公式サイトの案内では、世帯の課税状況・所得に応じて次のような区分が設けられています。

  • 世帯全員が市民税非課税・生活保護受給世帯:3,200円
  • 本人が非課税で同一世帯に課税者がいる:4,000円
  • 市民税課税・合計所得150万円未満:7,000円
  • 市民税課税・合計所得150万円以上250万円未満:8,000円
  • 市民税課税・合計所得250万円以上500万円未満:9,000円
  • 市民税課税・合計所得500万円以上700万円未満:10,000円
  • 市民税課税・合計所得700万円以上:20,500円

このほか、身体障害者手帳1〜4級や愛の手帳(療育手帳)A1〜B2、精神障害者保健福祉手帳の保持者などは無料になる区分もあります。利用できる交通機関は、横浜市営バス・民営バス・市営地下鉄(みなとみらい線を除く)・金沢シーサイドラインなど横浜市内の交通事業者が対象で、都営交通が中心の東京都シルバーパスとは範囲が異なります。

川崎市では「高齢者外出支援乗車事業」という名称で、市内在住の満70歳以上の方を対象に、市内路線バスの優待乗車ができる仕組みがあります。まず記名式のSuicaまたはPASMOに「高齢者特別乗車証」を登録し、そのICカードを持って「高齢者フリーパス」を購入する2段階の仕組みで、フリーパスの料金は1か月1,000円・3か月3,000円・6か月6,000円・12か月12,000円という期間単位の設定になっています。これとは別に、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の保持者や児童扶養手当受給者などを対象にした「福祉パス」という無料のフリーパスもあり、対象要件によって案内される制度が変わります。購入・登録は、川崎市内のバス事業者の券売所・営業所、または川崎市内の郵便局で、使用開始日の2週間前から手続きできます。負担金や対象要件の詳細は、まず川崎市の相談窓口(高齢者外出支援乗車事業相談窓口)に問い合わせて確認することになります。

このように、東京都・横浜市・川崎市はいずれも「高齢者の移動を支える乗車制度」という目的は共通していますが、対象年齢の起点、負担金の決め方、有効期間、利用できる交通事業者の範囲まで、制度設計はそれぞれ独立しています。「都内でシルバーパスを使っていたから、神奈川に引っ越しても同じ条件だろう」という思い込みは通用しないため、転居の際は転居先の自治体に個別に確認する必要があります。

申請から利用開始まで、実際どんな流れ?

申請から利用開始までの流れは? 東京都・横浜市・川崎市のいずれも、対象年齢に達したあとに窓口や郵送で申請し、本人確認・所得区分の確認を経てパスやICカードが交付される、という基本の流れは共通しています。

東京都シルバーパスは、対象年齢になった月の初日以降、シルバーパス発行窓口(バス営業所等)へ本人が出向き、申込書の記入と必要書類の提示を行うことで、その場での交付を受けられる仕組みです。窓口が近くにない地域では、事前に発行窓口の場所・受付時間を東京都シルバーパスの案内ページや、東京バス協会のシルバーパス専用窓口で確認しておくとスムーズです。

横浜市の敬老パスは、対象年齢の約3か月前に市から案内が届く仕組みで、案内にもとづいて「交付申請書」を区役所高齢・障害支援課へ郵送するか、本人確認書類を持参して窓口で申請します。有料区分の場合は納付書を受け取って金融機関で納付したあとICカードの発行までに1か月程度、無料区分の場合は申請後2〜3週間程度かかると案内されています。手続きの詳細や不明点は、お住まいの区の区役所高齢・障害支援課に問い合わせる案内になっています。

川崎市の高齢者外出支援乗車事業は、まず記名式のSuicaまたはPASMOに「高齢者特別乗車証」を登録したうえで、そのICカードを持って市内バス事業者の券売所・営業所や川崎市内の郵便局で「高齢者フリーパス」を購入する手続きです。使用開始日の2週間前から手続きできるため、利用を予定している場合は早めに窓口へ向かうと安心です。

いずれの制度も、「対象年齢に達したら自動的にパスが送られてくる」わけではなく、本人(または家族のサポートを受けた本人)による申請が必要という点は共通しています。誕生日が近づいたら、お住まいの自治体の公式サイトで最新の申請窓口・必要書類を確認し、早めに動き出すことをおすすめします。

ありがちな失敗と、その避け方

高齢者向けの乗車制度でよくある失敗を整理すると、多くは「制度の仕組みを思い込みで判断してしまう」ことが原因です。

ひとつ目は、都外に住む親の分を、都内在住の子どもが代理で申請できると思い込んでしまうケースです。東京都シルバーパスは「都民であること」が条件のため、親が神奈川県内に住んでいる場合は対象になりません。神奈川県内であれば、横浜市の敬老パス・川崎市の高齢者外出支援乗車事業など、その自治体独自の制度を個別に確認する必要があります。

ふたつ目は、「シルバーパス=1,000円」という一部の情報だけを見て、自分も1,000円で交付を受けられると思い込んでしまうケースです。1,000円区分は住民税非課税、または所得が一定以下の経過措置対象者に限られ、それ以外の課税者は本則12,000円(2026年度の期間限定措置適用時は6,000円)の負担になります。窓口で案内される金額が想定と違った場合は、まず自分がどの区分に該当するかを確認するのが確実です。

みっつ目は、「去年と同じ金額だろう」と思い込んで、経過措置や制度見直しの情報を見落としてしまうケースです。2026年度のように、期間限定の負担軽減措置が実施されている年は、購入するタイミングによって案内される金額が変わることがあります。更新のたびに、東京都福祉局や発行窓口の最新案内を確認する習慣をつけておくと、想定外の負担に戸惑うことを防げます。

これらの失敗は、いずれも「制度は自治体ごとに独立している」「金額区分は毎年見直される可能性がある」という前提を持ち、申請の都度、公式サイトや窓口で最新情報を確認することで避けられます。

なお、高齢者向けの支援制度としては、高齢者の紙おむつ支給・助成についても、くらしぽーたるで自治体別に整理しています。移動の支援制度とあわせて、介護・生活支援に関する制度も知っておくと、家族の暮らしを支える選択肢が広がります。くらしぽーたるのくらしの支援制度ガイドでは、お住まいの自治体の該当制度をまとめて確認できます。

この記事で持ち帰れること

東京都シルバーパスと、横浜市・川崎市の高齢者向け乗車制度について、次の3点を押さえておけば、ご自身や家族の申請時に迷いにくくなるはずです。

  • 東京都シルバーパスは満70歳以上の都民が対象で、費用は住民税の課税状況により1,000円または12,000円(2026年度4〜9月新規購入の課税者は経過措置で6,000円)に分かれること
  • 横浜市・川崎市にも同様の制度があるが、対象年齢の起点・負担金の仕組み・利用できる交通機関はそれぞれ独立しているため、都内の制度をそのまま神奈川県内に当てはめられないこと
  • 申請は本人(または家族のサポートを受けた本人)による窓口・郵送の手続きが必要で、対象年齢になったら自動的に交付されるわけではないこと

まずは、ご自身やご家族が対象年齢に近づいたら、お住まいの自治体の公式サイトで「シルバーパス」または「敬老パス」のページを検索し、現時点の負担金区分と申請窓口を一度確認してみてください。

この記事は2026年8月時点で確認できた東京都・横浜市・川崎市の公式サイトの案内にもとづいています。負担金・対象要件・経過措置の内容は、制度見直しや年度改定により変更されることがあるため、最新の情報は必ず各自治体の公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q. 東京都シルバーパスは何歳から申し込めますか?

A. 満70歳になる月の初日から購入できます。対象は東京都民(寝たきりの方を除く)で、都外にお住まいの方は対象になりません。

Q. シルバーパスの費用は必ず12,000円かかりますか?

A. いいえ。住民税が非課税の方や、課税でも前年の合計所得金額が135万円以下などの経過措置対象者は1,000円です。それ以外の課税者は本則12,000円ですが、2026年度は4〜9月の新規購入に限り、経過措置として6,000円に引き下げられています。

Q. 神奈川県に住む親も同じシルバーパスを使えますか?

A. 使えません。東京都シルバーパスは東京都民が対象の制度です。神奈川県内であれば、横浜市の敬老パスや川崎市の高齢者外出支援乗車事業など、お住まいの自治体独自の制度を個別に確認する必要があります。

Q. 横浜市の敬老パスの負担金はいくらですか?

A. 世帯の課税状況・所得に応じて3,200円から20,500円まで区分が分かれています。世帯全員が市民税非課税・生活保護受給世帯は3,200円、市民税課税で合計所得700万円以上の方は20,500円です。詳しい区分は横浜市公式サイトでご確認ください。

Q. 申請すればすぐにパスやICカードを使えますか?

A. 自治体によって異なります。東京都シルバーパスは窓口でその場での交付が基本ですが、横浜市の敬老パスは申請後、有料区分でICカード発行まで1か月程度、無料区分で2〜3週間程度かかると案内されています。川崎市の高齢者フリーパスも使用開始日の2週間前からの手続きが必要です。利用を予定している場合は早めに動き出すことをおすすめします。