介護が必要な家族の紙おむつ代は、毎月まとまった出費になります。「自治体に助成制度があるらしい」と聞いたことはあっても、自分の親や配偶者が対象になるのか、いくら助かるのか、どこに申し込めばいいのか、正確に把握できている方は多くありません。この記事では、横浜市・川崎市・練馬区・東村山市の公式情報にもとづいて、高齢者向けの紙おむつ支給・助成制度の仕組みと、自治体ごとの違いを整理して解説します。

  • 紙おむつ支給・助成の対象となる要介護度・所得要件は、いずれも自治体が独自に定めており、全国一律の基準はない
  • 支給方法には「紙おむつそのものが自宅に届く現物給付」と「購入後に費用の一部が戻る現金助成」の2種類があり、自治体によってどちらかに決まっている
  • 月額の上限は6,000円〜8,000円程度、年額上限を定める自治体もあり、超過分や利用者負担分は自己負担になる

なお、この制度には「要介護認定さえ受けていれば自動的に対象になる」と思い込むと見落としやすい注意点が1つあります。これについては記事の後半で説明します。まずは、紙おむつ支給・助成制度がどんな仕組みで動いているのかから確認していきましょう。

高齢者紙おむつ支給・助成制度とはどんな制度?

高齢者紙おむつ支給・助成制度とはどんな制度? 要介護高齢者のいる家庭の経済的負担を軽減するため、区市町村が独自に実施している任意の福祉サービスで、紙おむつの現物または購入費の一部が提供されます。

この制度は、介護保険法にもとづく介護給付とは別に、区市町村が独自の予算で実施している「地域支援事業」や「高齢者福祉サービス」の一環です。横浜市の案内によれば、対象は「ねたきり又は認知症の状態にある在宅の要介護者」で、要介護4・5の方、および要介護1〜3で各区福祉保健センター長が必要と認めた方とされています。川崎市の案内では、65歳以上で要介護度3〜5に認定され、紙おむつを必要とする在宅の高齢者が対象です(40〜64歳の若年性認知症患者も別枠で対象)。練馬区の案内では要介護1以上、東村山市の案内では要介護3以上と、対象となる要介護度の下限が自治体ごとに異なります。

共通しているのは、いずれも「在宅で生活している要介護高齢者」を対象にしている点です。特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、施設に入所している方は対象外になります。東村山市の案内では、対象外施設として介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホームなどが明記されており、施設入所中は施設側で介護用品が提供される前提のため、二重給付を避ける趣旨と考えられます。

在宅介護をしている方にとって、紙おむつは毎月必ず発生する費目です。引っ越しの役所手続きで新しい市区町村に転入した際、要介護認定の引き継ぎ手続きとあわせて、この制度の対象になるかどうかも確認しておくと、転居後の家計管理がしやすくなります。

対象になる要介護度・所得要件は自治体でどう違う?

対象になる要介護度・所得要件はどう違う? 要介護度の下限は「要介護1以上」から「要介護4・5のみ」まで幅があり、所得要件も「非課税世帯のみ」から「年収320万円以下」まで自治体ごとに基準が異なります。

4つの自治体の公式案内を比較すると、要介護度の基準にはっきりとした違いがあります。

  • 横浜市:要介護4・5の方が基本。要介護1〜3でも各区福祉保健センター長が必要と認めれば対象
  • 川崎市:65歳以上で要介護3〜5、または40〜64歳の若年性認知症患者で要介護3〜5
  • 練馬区:要介護1以上で常時紙おむつを必要とする方
  • 東村山市:要介護3以上で日常生活において紙おむつを使用している方

所得要件にも差があります。横浜市は生活保護受給世帯または市民税非課税世帯が対象で、市民税課税世帯は対象外です。川崎市は所得階層に応じて負担率が0%(生活保護世帯)から20%(市町村民税課税世帯)まで段階的に変わる仕組みで、課税世帯でも利用はできますが自己負担が大きくなります。練馬区は年間所得320万円以下(介護保険料の段階でいう第8段階以下)が要件です。東村山市は当該年度の市町村民税が非課税であることが要件の一つになっています。

高齢者紙おむつ支給・助成の要介護度・所得要件・支給方法・上限額を横浜市・川崎市・練馬区・東村山市で比較した表

このように、「要介護3だから対象になるはず」「非課税世帯だから使えるはず」といった判断を、他の自治体の情報や噂話をもとに行うのは危険です。同じ要介護3でも、川崎市や東村山市では対象になり得ますが、横浜市の基準(要介護4・5が基本)ではセンター長の個別判断が必要になります。お住まいの区市町村の要介護度・所得要件は、必ずその自治体の公式サイトで確認することが欠かせません。

紙おむつはどうやって届く?現物給付と現金助成の違いは?

紙おむつはどうやって届く? 横浜市・川崎市・練馬区は指定事業者の紙おむつが毎月自宅に配送される「現物給付」、東村山市は自分で購入した後に費用相当額が振り込まれる「現金助成」です。

支給の仕組みは、大きく2つの方式に分かれます。

現物給付型(横浜市・川崎市・練馬区など)は、利用者が複数の指定事業者から1社を選び、その事業者の取扱商品の中から紙おむつ・おむつカバー・防水シーツなどを選んで注文する仕組みです。川崎市の案内では、月に1度、月額6,000円の限度額内で、選んだ事業者の商品を注文できるとされています。横浜市では、住居に配送される紙おむつの利用基準額の1割が利用者負担になり、生活保護受給世帯は無料です。この方式では、利用者が紙おむつを購入するために現金を立て替える必要がなく、毎月決まった商品が自動的に届く点が特徴です。

現金助成型(東村山市など)は、利用者が自分で紙おむつ・尿取りパッドを購入し、その領収書やレシートを添えて申請すると、購入費相当額(年間上限2万4千円)が指定口座に振り込まれる仕組みです。東村山市の案内では、申請期間は購入の翌年1月中(1月最終開庁日必着)とされており、現物給付のように「申請すればすぐ届く」わけではなく、購入と申請、振込までにタイムラグがあります。また、現金及び電子マネーによる支払いは対象になりますが、ポイント・割引券・商品券等の使用分や、配送料・代引き手数料、おしりふきなど紙おむつ以外の費用は対象外とされています。

紙おむつ支給・助成の申請から支給開始までの4ステップと、現物給付・現金助成の2方式の違いを示した図解

どちらの方式かによって、利用者が最初にすべき行動が変わります。現物給付型であれば、まず窓口やオンラインで利用申請をして事業者・商品を選ぶところから始まります。現金助成型であれば、先に紙おむつを購入してレシートを保管しておき、決められた申請期間にまとめて申請する、という順序になります。お住まいの自治体がどちらの方式かを知らずに動くと、「先に買っておけばよかった」「申請してから注文すればよかった」という行き違いが起こりやすいため、最初に確認しておきたいポイントです。

利用者負担はいくらになる?

利用者負担はいくらになる? 現物給付型は利用基準額の1割前後が自己負担になることが多く、現金助成型は購入費のうち上限額を超えた分が全額自己負担になります。

横浜市の現物給付では、利用基準額(要介護4・5は月額8,000円、要介護1〜3は月額6,000円)の1割が利用者負担です。生活保護受給世帯は無料になります。川崎市では所得階層に応じて負担率が変わり、生活保護世帯は0%、市町村民税課税世帯は20%という段階制です。練馬区では、購入した金額の1割が利用者負担となり、月額6,000円を超えた場合は超過分から5,400円を差し引いた額が上乗せの自己負担になります。

東村山市の現金助成では、紙おむつの購入費相当額が助成されますが、年間の上限は2万4千円と定められています。月あたりに換算するとおよそ2,000円ですが、これは「助成の上限」であって「利用者負担の割合」という考え方ではありません。上限を超えて購入した紙おむつ代は、全額自己負担になります。

このように、「1割負担」「所得階層別の負担率」「年間上限額」という異なる考え方の負担方式が併存しているため、単純に自治体同士の負担額を比較するのは難しい面があります。実際にいくら自己負担になるかは、使用する紙おむつの量や単価によっても変わってくるため、正確な金額はお住まいの自治体の窓口に相談するのが確実です。

申請はどこで、どうやって行う?

申請はどこで行う? 多くの自治体で各区市の高齢福祉担当窓口(福祉保健センター・高齢福祉課など)が申請先で、あわせてオンライン申請にも対応しています。

横浜市では各区福祉保健センターの高齢・障害支援課が窓口で、横浜市電子申請・届出システムからのオンライン申請にも対応しています。窓口申請は翌月中旬〜末日から配送が始まり、オンライン申請は申請日によって配送開始時期が変わります(1〜9日の申請で翌月配送、10日以降の申請で翌々月配送)。川崎市では各区役所高齢・障害課が窓口で、オンライン手続き(e-KAWASAKI)からも申請できます。練馬区では区内4か所の総合福祉事務所(練馬・石神井・大泉・光が丘)のいずれかに、介護保険証を持参して申請します。オンライン申請フォームも区のホームページから利用できます。

東村山市の現金助成は、郵送での申請にも対応しています。必要事項を記載した申請書(ホームページからダウンロードまたは健康増進課窓口で配布)と、おむつ使用者宛ての領収書・レシートの原本または写しを、購入の翌年1月中(1月最終開庁日必着)に郵送する形です。窓口に出向かなくても申請できる一方、申請期限を過ぎるとその年の助成を受けられなくなるため、レシートをこまめに保管しておく必要があります。

要介護認定の更新時期や、コンビニ交付サービスで住民票を取得するタイミングなど、他の手続きとあわせて窓口に立ち寄る機会があれば、紙おむつ支給・助成の相談も一緒に済ませてしまうと、二度手間になりません。また、要介護認定を受けている家族がいる場合は、避難行動要支援者名簿の対象になっていないかも、あわせて確認しておくと、災害時の備えとしても安心です。

対象から外れることはある?気をつけたい注意点

対象から外れることはある? 要介護認定の区分が変わったとき、施設に入所したとき、市区町村をまたいで転居したときは、いずれも改めて確認が必要です。

ここで、記事の冒頭で触れた「自動的に対象になるとは限らない」という注意点を説明します。要介護認定は、有効期間が定められており、定期的に更新・見直しが行われます。東村山市の案内では「介護認定の有効期間内が対象です。有効期間切れにご注意下さい」と明記されており、更新を忘れて有効期間が切れると、その間は制度の対象外になってしまいます。

また、要介護度そのものが更新時に変わることもあります。たとえば要介護3を基準にしている自治体で、更新の結果、要介護2に区分が変わった場合、それまで対象だった方が対象外になる可能性があります。逆に、要介護度が上がったことで新たに対象になるケースもあるため、更新のたびに「今の要介護度で対象かどうか」を確認し直す習慣をつけておくと安心です。

施設への入所も、対象から外れる代表的なケースです。東村山市の案内では、介護老人保健施設・特別養護老人ホームなど複数の施設が対象外として明記されています。在宅から施設入所に切り替わったタイミングで、紙おむつ支給・助成の対象からも外れることを、家族が把握していないケースは少なくありません。

そして、もっとも見落としやすいのが転居です。この制度はいずれの自治体でも独自に実施している任意のサービスであるため、ある区市町村で対象だった方が、別の区市町村に引っ越すと、制度の有無・要件・支給方法がまったく変わることがあります。前の自治体で現物給付を受けていたからといって、転居先でも同じ条件で使えるとは限りません。転居が決まったら、転出前に今の自治体の制度がいつまで使えるか、転入先にはどんな制度があるかを、それぞれの窓口で確認しておくことをおすすめします。

この記事で持ち帰れること

高齢者向けの紙おむつ支給・助成制度について、次の3点を押さえておけば、実際に申請を検討するときに迷わず判断できるはずです。

  • 対象となる要介護度・所得要件・支給方法(現物給付か現金助成か)は自治体ごとに異なるため、お住まいの区市町村の制度を個別に確認する必要があること
  • 利用者負担の考え方も「利用基準額の1割」「所得階層別の負担率」「年間上限額」など自治体で異なるため、単純比較はできないこと
  • 要介護度の更新・施設入所・市区町村をまたぐ転居があると、対象から外れることがあるため、状況が変わるたびに要件を確認し直す必要があること

在宅で介護をしているご家族がいる方は、まずお住まいの市区町村の高齢福祉担当窓口(または公式サイト)で、紙おむつ支給・助成制度があるかどうかを調べてみてください。制度があれば、要介護度と所得要件を確認するだけで、対象になるかどうかの見当がつきます。

なお、紙おむつ支給・助成制度の対象要件・支給額は、自治体の予算や条例改正によって年度ごとに見直されることがあります。この記事は2026年8月時点で確認できた情報にもとづいています。最新の対象要件・支給方法・上限額は、お住まいの市区町村の公式サイトで必ずご確認ください。

よくある質問

Q. 紙おむつ支給・助成制度は全国どこでも同じ内容ですか?

A. いいえ、全国一律の制度ではありません。介護保険給付とは別に区市町村が独自に実施している福祉サービスのため、対象となる要介護度・所得要件・支給方法(現物給付か現金助成か)・上限額は自治体ごとに異なります。お住まいの市区町村の公式サイトで確認してください。

Q. 施設に入所している場合も対象になりますか?

A. 多くの場合、対象外です。東村山市の案内では、介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・養護老人ホームなどに入所している方は対象外施設として明記されています。この制度は在宅で生活する要介護高齢者を対象にしています。

Q. 現物給付と現金助成、どちらの方式かはどう調べればよいですか?

A. お住まいの区市町村の公式サイトの「紙おむつ支給」または「紙おむつ助成」のページで確認できます。横浜市・川崎市・練馬区は指定事業者の商品が届く現物給付、東村山市は購入後に費用相当額が振り込まれる現金助成です。方式によって申請前に取るべき行動が異なるため、事前確認が重要です。

Q. 要介護度が下がったら、支給や助成はすぐに打ち切られますか?

A. 自治体の運用によりますが、要介護認定の更新で対象の要介護度を下回った場合は、その時点から対象外になる可能性があります。有効期間切れにも注意が必要です。詳細な取り扱いは、お住まいの市区町村の窓口に確認してください。

Q. 転居した場合、前の自治体と同じ条件で紙おむつ支給・助成を受けられますか?

A. 保証されません。この制度は区市町村が独自に実施しているため、転居先の自治体で制度の有無・要件・支給方法が異なる場合があります。転居が決まったら、転出前に現在の自治体、転入後は新しい自治体の窓口で、それぞれ制度の内容を確認することをおすすめします。