9月になると、離れて暮らす親や祖父母に「敬老の日、何かお祝いを」と考える方も多いのではないでしょうか。実は、多くの自治体には「敬老金」「敬老祝品」という、一定の年齢を迎えた住民にお祝いの品や現金を贈る制度があります。ただし、この制度は自治体によって内容が大きく異なり、しかも近年は縮小・廃止の動きも出ています。「うちの自治体はどうなっているのか」「対象年齢なのに何も届かないのはなぜか」——調べようとすると、意外とわかりにくい制度です。この記事では、東京都渋谷区・江東区・西東京市、神奈川県川崎市・横浜市の公式情報にもとづいて、敬老金・敬老祝品の仕組みと自治体ごとの違いを整理して解説します。

  • 敬老金・敬老祝品は法律で定められた全国一律の制度ではなく、各自治体が独自に実施する任意の事業
  • 対象年齢・金額・申請の要不要は自治体ごとにまったく異なり、廃止・縮小した自治体もある
  • 多くの自治体では申請不要で自動的に案内が届くが、川崎市のようにカタログから申込みが必要な自治体もある

なお、「対象年齢のはずなのに敬老金が届かない」というケースには、いくつか見落としやすい理由があります。これについては記事の後半で説明します。まず、敬老金・敬老祝品がどんな制度なのかから確認していきましょう。

敬老金・敬老祝品とはどんな制度?

敬老金・敬老祝品とはどんな制度? 老人福祉法にもとづく「老人の日」「老人週間」の趣旨を踏まえ、多年にわたり社会に貢献してきた高齢者を敬い、長寿を祝うために、各自治体が独自に実施する任意の事業です。

まず押さえておきたいのは、「敬老の日」と「老人の日」は別のものだという点です。厚生労働省の資料によると、9月の第3月曜日である「敬老の日」は国民の祝日ですが、老人福祉法では別途9月15日を「老人の日」、9月15日から21日までを「老人週間」と定めています。老人の日・老人週間の趣旨は、老人を大切にする意識を広め、老人自身も社会参加を通じて生活の向上に努めることの啓発にあります。

敬老金・敬老祝品は、この老人の日・老人週間の趣旨を踏まえて、市区町村が独自の条例や要綱にもとづいて実施している事業です。国が一律に「〇歳になったら〇円を支給する」と定めているわけではなく、実施するかどうか、対象年齢をどこに置くか、金額をいくらにするかは、すべて各自治体の判断に委ねられています。そのため、隣接する自治体同士でも制度の中身が大きく異なることが珍しくありません。

対象年齢についても、老人福祉法上「高齢者」は65歳以上とされていますが、敬老金・敬老祝品の対象年齢は各自治体が個別に設定しており、65歳から支給する自治体もあれば、後述する渋谷区のように75歳から、あるいは88歳・99歳といった長寿の節目の年齢だけを対象にする自治体もあります。「何歳から敬老金がもらえるか」という問いに、全国共通の答えはありません。

この制度の歴史をたどると、昭和22、23年頃から一部の市町村で「としよりの日」として行われていた行事が、昭和26年に全国社会福祉協議会によって国民的な行事として広められ、昭和38年の老人福祉法制定にあたって「老人の日」として法律に明記された、という経緯があります。もともとは地域ごとの自発的な取り組みから始まった行事であり、その成り立ちからしても、全国一律の基準を国が定める性質の制度ではなかったことがうかがえます。現在も、実施するかどうか、どの年齢層を対象にするか、金額をいくらにするかは、各自治体が地域の実情や財政状況を踏まえて個別に判断しています。

東京都の区市はどんな仕組み?

東京都の区市はどんな仕組み? 渋谷区・江東区のように節目年齢ごとに金額を変えて贈呈する区がある一方、西東京市のように88歳と100歳のみを対象にカタログギフトや現金を贈る市もあり、金額・対象年齢とも区市ごとに個別に設計されています。

渋谷区の敬老金は、9月15日時点で区内に住民登録がある75・77・80・85・88・90・95・99・105・108・110・111・115・120歳の方が対象です。金額は年齢によって段階的に変わり、75・77・80・85歳は10,000円、88・90・95歳は20,000円、99歳は30,000円、105歳以上は50,000円が贈呈されます。申請は不要で、10月に民生委員が自宅を訪問して手渡す仕組みです。訪問時にあわせて生活状況についての簡単な確認も行われます。

江東区も同様に節目年齢方式ですが、金額の設計は渋谷区と異なります。9月15日時点で区内在住の方のうち、満77歳は5,000円、数え88歳は15,000円、数え99歳は20,000円、数え100歳は50,000円、数え101歳以上は20,000円が贈呈されます。数え年で年齢を判定する点は、実際の誕生日ベースで考えると分かりにくいポイントなので、対象になりそうな家族がいる場合は区の窓口(長寿応援課)に直接確認しておくと安心です。

西東京市は、渋谷区・江東区とは異なる年齢設計を採っています。前年9月1日から当年8月31日までに満88歳になる方にはカタログギフト、4月1日から翌年3月31日までに満100歳になる方には現金50,000円(口座振込)が贈呈されます。対象者には9月上旬に案内が送付される仕組みで、こちらも申請は不要です。

敬老金・敬老祝品の対象年齢と金額を東京都3区市・神奈川県2市で比較した図解

このように、同じ東京都内でも「どの年齢を対象にするか」「金額をいくらにするか」「数え年か満年齢か」が区市ごとに違います。高齢者の紙おむつ支給・助成制度の記事でも触れたとおり、高齢者向けの自治体独自制度は、要介護度の基準や対象範囲が自治体ごとに個別に定められているケースが多く、敬老金・敬老祝品もその一例だといえます。お住まいの区市の制度を、他の自治体の情報で代用して判断しないよう注意が必要です。

神奈川県の市はどんな仕組み?

神奈川県の市はどんな仕組み? 川崎市は88歳・99歳以上を対象にカタログから選ぶお祝い品を継続している一方、横浜市は平成18年度に敬老祝金を廃止し、現在は100歳以上への祝品贈呈と施設優待に切り替わっています。

川崎市敬老祝事業は、基準日(令和8年9月15日)時点で川崎市内に1年以上住民登録がある満88歳と満99歳以上の方が対象です。「長年社会の発展に貢献された高齢者に対し、感謝の意をこめて」、川崎市にゆかりのある品をお祝い品として贈呈する仕組みで、対象者宅には7月中旬にカタログと申込ハガキが届きます。カタログから欲しい品物を選び、申込ハガキに印をつけて8月7日までにポストに投函すると、9月中旬に自宅へ届きます。申込期限は令和8年12月末までで、これを過ぎるとお祝品は贈呈されません。

ここが渋谷区・江東区・西東京市と大きく異なる点です。川崎市は「申請(申込み)が必要」な仕組みであり、案内が届いたからといって自動的にお祝品が届くわけではありません。カタログが届いたことに気づかず期限を過ぎてしまうと、対象年齢であってもお祝品を受け取れなくなってしまいます。対象になりそうなご家族がいる場合は、7月中旬以降に届く郵便物を見落とさないよう、あらかじめ声をかけておくとよいでしょう。

一方、横浜市の敬老祝金贈呈事業は平成18年度をもって終了しています。現在は、各区内の最高齢者および当該年度中に100歳以上の年齢に達する市民に対して、祝品と祝状を贈呈する仕組みに切り替わっています。あわせて、65歳以上の方を対象に、敬老の日前後に帆船日本丸や横浜人形の家など市内施設を無料・割引で利用できる優待も実施されています。「昔は横浜市にも敬老祝金があったはずだが、今年は届かない」というケースは、この制度変更が背景にある可能性があります。

このように、神奈川県内でも川崎市と横浜市とでは制度の有無・対象範囲がまったく異なります。制度の縮小・廃止は珍しいことではなく、財政状況や高齢化の進行にあわせて見直しが行われることがある、という前提で捉えておくとよいでしょう。

なぜ対象年齢なのに敬老金が届かないことがある?

なぜ対象年齢なのに届かないことがある? 「制度自体が廃止・縮小されている」「基準日時点で住民登録がない」「申請が必要な自治体で申込みをしていない」の3つが主な理由です。

ここで、記事の冒頭で触れた「対象年齢のはずなのに敬老金が届かない」という疑問について説明します。考えられる理由は主に3つあります。

1つ目は、そもそもお住まいの自治体で敬老金・敬老祝金の制度自体が廃止・縮小されている場合です。横浜市・相模原市のように、かつて実施していた敬老祝金を財政上の理由等で廃止し、100歳以上のみの祝品贈呈に切り替えた自治体があります。「以前は届いていたのに、今年から届かなくなった」という場合、まずは制度変更がなかったかを自治体の公式サイトで確認するのが確実です。

2つ目は、基準日(多くの自治体で9月15日または9月1日)時点で、その自治体に住民登録がない場合です。年度の途中で他の市区町村へ転居した場合、転居先・転居元のどちらの基準でも対象から外れてしまうことがあります。引っ越しの役所手続きで転出・転入の時期を検討する際は、こうした自治体独自の基準日がある制度にも影響することを、あわせて念頭に置いておくとよいでしょう。

3つ目は、川崎市のように申請(申込み)が必要な自治体で、案内やカタログが届いていたにもかかわらず、申込みをしないまま期限が過ぎてしまった場合です。多くの自治体は申請不要で自動的に届く仕組みですが、すべての自治体がそうとは限りません。お住まいの自治体の制度が「申請不要」なのか「申請必要」なのかを、事前に確認しておくことが大切です。

「敬老金が届かない」ときに、住民登録・制度の実施状況・申請要否の順で確認するフローチャート

上記の3つの可能性を順番に確認しても心当たりがない場合は、単に案内・訪問の時期がまだ来ていないだけということもあります。渋谷区の民生委員訪問は10月、川崎市のお祝品到着は9月中旬というように、自治体によって時期にも幅があるため、9月上旬の時点で届いていなくても慌てず、まずはお住まいの高齢者福祉担当課へ直接問い合わせるのが確実です。

対象になりそうな家族がいる場合、今できることは?

対象になりそうな家族がいる場合、今できることは? お住まいの自治体の公式サイトで対象年齢・金額・申請の要不要を確認し、案内やカタログが届く時期を把握しておくことです。

離れて暮らす親や祖父母が対象年齢に近づいている場合、家族としてできる具体的な行動は次のとおりです。

  • お住まいの市区町村の高齢者福祉担当課(高齢者福祉課・長寿応援課・高齢者支援課等、名称は自治体により異なる)の公式サイトで、敬老金・敬老祝金制度の有無と対象年齢を確認する。制度自体が実施されているかどうかは、自治体ごとに前提が異なるため、まず確認することが出発点です
  • 基準日(多くは9月1日または9月15日)時点の住民登録地で判定されることを踏まえ、年度の途中に転居予定がある場合は、対象から外れる可能性がないか窓口に確認しておく
  • 川崎市のように申請が必要な自治体では、案内やカタログが届く時期(多くは7月〜9月上旬)を事前に把握し、郵便物を見落とさないよう家族間で共有しておく
  • すでに対象年齢を迎えているのに例年届いていない場合は、制度の廃止・縮小がなかったかを公式サイトで確認したうえで、不明な点は窓口に問い合わせる
  • 敬老金・敬老祝品とあわせて、紙おむつ支給やシルバーパスなど日常生活を継続的に支える制度の対象にもなっていないか、この機会にまとめて確認しておく

制度の有無や内容は、自治体の財政状況や高齢化の進行度合いによって、年度ごとに見直される可能性があります。一度確認した情報をそのまま来年も通用すると思い込まず、対象年齢が近づくたびに最新情報を確認する習慣をつけておくと安心です。

敬老金以外にも、自治体独自の高齢者向け制度はある?

敬老金以外にも高齢者向け制度はある? 敬老金・敬老祝品はあくまで長寿の節目を祝う一時的な贈呈であり、日常生活を支える制度としては、紙おむつの支給・助成や、シルバーパス・敬老パスといった交通費助成が別途用意されています。

敬老金・敬老祝品は、あくまで長寿という節目の年齢を迎えたことへの一時的なお祝いであり、日常生活の負担を継続的に軽くする制度ではありません。この点は、混同しやすいポイントなので整理しておきます。

高齢者の在宅生活を継続的に支える制度としては、高齢者の紙おむつ支給・助成制度のように、要介護度に応じて紙おむつの現物支給や購入費の助成を行う制度があります。また、外出の負担を軽くする制度としては、東京都シルバーパスや神奈川県内の敬老パスのように、都営交通・市バス等を割安な負担金で利用できる制度もあります。

これらはいずれも自治体(または都道府県)が独自に設計している点は敬老金・敬老祝品と共通していますが、性質が異なります。敬老金・敬老祝品は「年に一度、節目の年齢を祝う」一時金・一時的な贈呈であるのに対し、紙おむつ支給やシルバーパスは「日常生活を継続的に支える」制度です。どちらも対象になる場合、片方だけを申請して満足してしまわないよう、家族の状況に応じて両方の制度を確認しておくとよいでしょう。窓口が異なる場合もあるため(敬老金は高齢者福祉課、シルバーパスは別窓口など)、自治体の公式サイトで担当課ごとの案内を確認するのが確実です。

この記事で持ち帰れること

敬老金・敬老祝品について、次の3点を押さえておけば、ご家族の状況に合わせて次の一歩を判断できるはずです。

  • 敬老金・敬老祝品は国の一律制度ではなく、各自治体が独自に実施する任意の事業で、対象年齢・金額・申請の要不要が自治体ごとに大きく異なること
  • 多くの自治体は申請不要で自動的に届くが、川崎市のように申込みが必要な自治体もあり、その場合は期限を見落とすと受け取れなくなること
  • 横浜市・相模原市のように制度を廃止・縮小した自治体もあるため、「届かない」場合はまず制度自体の現状を確認する必要があること

離れて暮らすご家族が敬老金・敬老祝品の対象年齢に近づいている、あるいは対象年齢のはずなのに例年届いていないという方は、まずお住まいの市区町村の高齢者福祉担当課の公式サイトを確認してみてください。基準日や申請の要不要は自治体ごとに異なるため、思い込みで判断せず、公式情報にあたることが一番の近道です。

なお、敬老金・敬老祝品の制度内容・金額・対象年齢は、自治体の条例改正や年度ごとの予算方針によって変わることがあります。この記事は2026年9月時点で確認できた情報にもとづいています。最新の制度内容は、お住まいの市区町村の公式サイトで必ずご確認ください。

よくある質問

Q. 敬老金は全国どの自治体でももらえますか?

A. いいえ、敬老金・敬老祝品は国が一律に定めた制度ではなく、各自治体が独自に実施する任意の事業です。横浜市・相模原市のように制度を廃止した自治体もあるため、お住まいの自治体で実施されているかをまず確認する必要があります。

Q. 敬老金をもらうのに申請は必要ですか?

A. 自治体によって異なります。渋谷区・江東区・西東京市は申請不要で自動的に案内や訪問が行われますが、川崎市はカタログから商品を選んで申込みハガキを返送する必要があります。お住まいの自治体の方式を事前に確認しておくことが大切です。

Q. 何歳から敬老金の対象になりますか?

A. 自治体によって設定が異なります。渋谷区は75歳から、江東区は満77歳から、西東京市は88歳からと、対象年齢の起点は統一されていません。老人福祉法上「高齢者」は65歳以上とされていますが、敬老金の対象年齢はこれとは別に各自治体が個別に定めています。

Q. 敬老金と敬老の日、老人の日は同じものですか?

A. いいえ、敬老の日(9月第3月曜日)は国民の祝日で、老人の日(9月15日)・老人週間(9月15日〜21日)は老人福祉法にもとづく別の記念日です。敬老金・敬老祝品は、老人の日・老人週間の趣旨を踏まえて各自治体が独自に実施している事業です。